今回は損益計算書(以下、P/L)の最後の利益概念「当期純利益」について解説していく。
前回は「経常利益」について解説してきた。
経常利益について簡単に復習しておくと、営業利益から「本業とは関係ない取引」を加味して計算された利益であり「事業活動全体から得られた利益」を示す概念であった。
また、企業事例として、無借金経営の任天堂と借入比率が高いイオンの両社を比べ、主に借入コスト(支払利息)の負担の違いについて見てきた。
今回はその続きとして「当期純利益」について解説していく。
まずは当期純利益の意味から確認していこう。
当期純利益とは「企業にとっての最終成果を示す利益」である。
事業活動全体から得られた利益を示す「経常利益」は実は最終利益ではない。
この点、経常利益の計算プロセスで登場してきた「営業外損益」は「恒常的なもの」であった点を思い返して欲しい。
つまり、経常利益の計算プロセスに恒常的な取引(=よく発生する取引)は含まれているが、恒常的でない取引(=あまり発生しないイレギュラーな取引)は含まれていないのだ。
経常利益と当期純利益の対比という形でまとめると、このようになる。
簡単に言ってしまえば、イレギュラーな取引を含まないのが「経常利益」
イレギュラーな取引を含むのが「当期純利益」ということになる。
そしてもう一つ、税金についても加味しているのが当期純利益となる。
以上を踏まえた上で、当期純利益の算定式を見ていこう。
「経常利益」+「特別利益」-「特別損失」-「税金等」=「当期純利益」
これが当期純利益の算定式だ。ポイントは2つ。
イレギュラー取引を示す「特別利益」「特別損失」を加味する点と、税金費用を差し引く点だ。
イレギュラー取引としては、例えば災害による損失が発生したなら「特別損失」となるし、建物を売却したことによる臨時的な収入があれば「特別利益」となる。
税金としては、法人に関係する税金「法人税」「住民税」「事業税」などが含まれる。
これらすべてを差し引いて残ったものが当期純利益であるため、企業にとっての最終成果を示す利益と言われるのだ。
ここまでの話を図でまとめておこう。
図の見方は前回までと同じだが、左側の図はP/Lの構造(並び順)だ。そのうち今回はオレンジ色になっている「当期純利益」にフォーカスしている。
そして右側にある図は、簿記のルールにしたがって表示したものだが、これは「右側に収益、左側に費用」をまとめて記載しているに過ぎない。
図を見て頂くと前回に比べ「特別損益など」が追加されているのがわかるかと思う。
「など」には税金費用を含めている。
参考程度だが、当期純利益は税金を加味する前後で呼び名が変わる。良ければ知っておいて欲しい。
「税引前利益」:税金を考慮する前の利益
「税引後利益」:税金を考慮した後の利益
一般的に「純利益」と言われた際には、税引後利益を意味していると理解して良いだろう。もちろん文脈に応じて使い分けはして頂きたい。
では最後に企業事例を紹介していこう。
今回は、特別損益の中身がイレギュラーであることを知ってもらうことを目的として頃合いの会社を2つ取り上げてみる。
1社目はディズニーリゾートを運営する「オリエンタルランド」だ。
特別損失という項目の中に「臨時休園による損失」というのがわかるかと思う。
これは新型コロナウイルスの影響でダメージを受けた金額と言える。
まさにイレギュラーな取引(イベント)による損失なので、特別損失に記載されているのだ。
2社目として、Webマーケティング支援や運用代行をしているガイアックスという会社をみてみる。
こちらは特別利益と特別損失で金額の大きいものがある。
特別利益に目を向けると「雇用調整助成金」というものがある。
これは、新型コロナウイルスの影響を受ける中で、従業員の雇用維持を目的として支給される助成金のことである。
特別損失の方を見てみると「新型コロナウイルス感染症による損失」とある。これはそのままの意味だ。
いずれの場合も、イレギュラーな取引(イベント)として発生した損益のため、特別損失や特別利益に記載されていると理解することができる。
以上がP/Lの最後の利益概念である「当期純利益」の解説となる。
そもそもの意味や算定式、その具体例をしっかりと理解してみて欲しい。
編集後記
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。今回は「当期純利益」について紹介してみました。
P/Lには色々な利益概念があって最初は理解しにくいですが、一つ一つその本質や役割を読み解いていくと、企業の特徴や構造を把握することにつながります。
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