前回、損益計算書(以下、P/L)が持つ2つのポイントについて解説した。
今回からはP/Lの構造で登場してきた「利益」についてみていきたいと思う。
P/Lの並び順、覚えているだろうか?
今後の記事でも詳しく解説していくが、P/Lは「売上」からスタートして以下の各利益を算出していく流れはぜひ覚えてもらいたい。この各利益のことを「段階利益」と呼んだりもする。段階的に算出された利益だからこう呼ばれるのだろう。
「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」
今回はその中でも「売上総利益」について詳しくみていく。
売上総利益は別名「粗利益(あらりえき)」とも呼ばれ、P/Lで最初に算出される利益概念だ。
実務上「粗利(あらり)」と連呼する人もいるくらい、粗利は親しまれている。
まず最初に、売上総利益の意味から確認しておこう。
売上総利益とは、商品やサービス自体がもたらす利益ということができる。
どういうことか?
当たり前だが会社によって扱っている商材は異なる。
目に見える商品や製品を扱っている会社もあれば、目に見えないサービス系の商品を扱っている会社もある。商材は異なるが、どちらにも共通しているプロセスがある。それが以下の2つだ。
【プロセス①】 顧客に価値を届けてお金を頂く
【プロセス②】 ①のために必要なお金をかける
実際のビジネス現場では、まず必要なお金をかけ(プロセス②)、そして価値をお客さんに届ける(プロセス①)といった流れになる。
身近な商品を思い浮かべてもらいたいのだが、それらの商品は私たちの手元に届くまでに色々なお金がかかっている。そして何かのキッカケで出逢ったその商品に価値を感じ、お金を支払ったはずだ。
この①と②の差額こそが「商品やサービスが生み出した価値」であり、売上総利益の意味となる。
続いて、売上総利益の算定式について見ていこう。
実際にP/Lではどのように計算されているかを知るため、以下の式は必ず頭に叩き込んで欲しい。
「売上」-「売上原価」=「売上総利益」
実はこの算定式、先ほどのプロセス①②と対応している。
どちらが「売上」でどちらが「売上原価」か、少し考えてみて欲しい。
正解を発表しよう。
考えてみようとは言ったものの、こういう時はたいていすぐに答えを見られてしまうものだ泣
【①】 顧客に価値を届けてお金を頂く ・・・ 「売上」に相当
【②】 ①のために必要なお金をかける ・・・ 「売上原価」に相当
売上は比較的イメージしやすいと思う。
売上原価は業種や扱う商材によって発生するコストが変わってくる。
一例だが、商品を扱う場合には「仕入代金」が売上原価に含まれるし、サービスを扱う場合には「人件費」が含まれる。ざっくりではあるが、こんなイメージを持っておくと良いだろう。
ここまでの話を図でまとめておこう。
左側の図はP/Lの構造(並び順)だ。そのうち今回はオレンジ色になっている「売上総利益」を見ている。
そして右側にある図は、簿記のルールにしたがって表示したものだが、これは「右側に収益、左側に費用」をまとめて記載しているに過ぎない。
売上が売上原価を上回っていれば「売上総利益」となるし、下回っていれば「売上総損失」となる。
ただ、売上総損失になっているビジネスがあれば、それはやめた方がいい。商品やサービス自体から利益が出ていないのであれば、その後の段階利益も損失となるだろうし、何よりビジネスとして成り立っていない。
安く仕入れて高く売るのがセオリーなところ、高く仕入れて安く売っているようなものだ。
では最後に、企業事例を取りあげて終わろうと思う。
今回は具体例として吉野家ホールディングとコメダホールディングを比べてみる。牛丼の吉野家と中京地区を中心に全国展開をしている珈琲チェーンだ。コーヒーには豆菓子が付いてくる。
両社の売上総利益を比べてみたものが以下の図だ。
両社の企業規模が異なるため、売上を100とした場合の比率で比べている。
見て頂けるとわかるように、吉野家の方が売上総利益が大きく、コメダは小さい。
これだけを持って優劣は判断できないのだが、その理由は次回「営業利益」について解説する際に触れていこうと思う。
この段階では「同じBtoCビジネスの飲食店であっても、扱っているモノや戦略が違うためにP/L数値も変わってくる」ということを知っておいてもらいたい。
次回は「営業利益」について紹介していく。
編集後記
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。今回からP/Lで登場してくる各利益について紹介していきます。ここらへんの内容は、簿記の学習でも登場はしますが、意外と本質的な部分までは触れられていないのが現状です。
「そもそも売上総利益ってなんだっけ?」この当たり前のような問いに答えることで、この先紹介していく別の利益概念についても理解を深めていけるはずです。
ちなみに本記事内で登場した「コメダ珈琲」ですが、よく大学生~新卒の頃に通った記憶があります。
当時は武蔵小杉から南武線で1駅で行ける武蔵中原という場所に住んでいたのですが、そこにコメダ珈琲店があり、お世話になっていたのを思い出しました。
コメダ珈琲の先にはブックオフがあるのですが、そこは高校受験のために通っていた予備校をさぼった時に居られた唯一の場所でした。笑
まったく関係ない話をしてしまいましたが、企業分析をすると思い出に浸ることも出来たりします。
僕が1on1形式で直接講義をしている「ビジネス会計講座」でも、企業分析を取り入れています。
会計知識ゼロから短期1ヶ月で企業分析できることを目的としたWeb講義なので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
最後に、公式LINEのお知らせをさせてください。今回のような記事を「投稿」でお知らせしたり、おすすめの本を紹介したりしています。良ければ「友だち追加」して頂けると力になります。
また定期的に投稿していきたいと思うので、別の記事でお目にかかれることを楽しみにしています。